第15章 アジアコンクール
明日はにとって大事な大会だというのに、これ以上嫌なことを考えたくない。
再びの隣に横になって、顔を向かい合わせる。申し訳なさそうにこちらを伺う瞳と視線が交わった。綺麗だ。長いまつ毛に囲まれた瞳も、ツンと上がった端正な鼻も、何もつけていないのに潤った唇も、全部が綺麗すぎる。反則だ、こんなの。テレビの中でもこんなに綺麗な人間を見た事がない。
「……ったく、ホントビビるくらい綺麗な顔してるなは」
「はぁ?何言ってんだお前」
「初めて一緒に清掃した時のこと覚えてる?オレあの時、マジでお前のことぶん殴ろうとしたんだけどさ、顔が綺麗すぎて見とれて殴れなかった」
「え、意味わかんねえ。俺のこの非モテ顔のどこに見とれてたんだよ」
「お前が非モテな理由は眼鏡だろ」
「関係ねーよ、チビでヒョロヒョロの男が好きな女どこにいんだよ」
「男からはモテるかもよ」
「男ねぇ……。別に偏見はねえけど、俺は女の子がいいわ」
当然のように放たれる言葉に酷く傷つく。
勝手に探るような話を振って、勝手に凹んで何をしているんだろうオレは。情けない。
これ以上話すのはやめておこう。
「明日早いんだろ?早く寝ようぜ」
「ん、ああ。そうだな。おやすみ」
「明日頑張れよ」
「ん、任せろ」
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま目を閉じる。
遠出の疲れからか、その日の夜はあっさり眠りにつくことが出来た。