第15章 アジアコンクール
「…手、かして」
「?いいけど」
布団の中で向き合い、お互いの顔の前での手を取りにぎりしめる。
「明日、頑張れよ」
「ああ、ベストをつくす」
「みてるから」
「そうか、ならしっかりやらなきゃいけないな」
ははっとはにかむように小さく笑うの手を、自分の口元に引き寄せ細く美しい指にキスを落とす。なあ、わかるだろ?普通は友達の手にキスなんてしない。わかれよ。
「……お前ほんとモテそうだよな」
「急になんだよ」
「いや、友達の俺ですらドキっとしたから。てかお前こういうこと他の友達にもすんの?」
「しねーよ、気持ち悪い」
「俺は気持ち悪くねえの?」
「当たり前だろ、お前にならなんでもできる、したい」
「じゃあ、キスできる?」
「…………ッ」
自分で言っておきながら、ぶははは千冬とキスって!と笑うの体をベッドに押し付け見下ろす。もう限界だ。
馬鹿で、何も知らない、鈍感でどうしようもないお前が好きだ。好きなのに。
「………千冬?」
身じろいだら唇が触れあってしまいそうな距離まで、顔を近づける。
顔にかかる吐息が熱い。
「お、おい、千冬、近いって」
「煽ったの、だからな」
「へ?」
「、キスさせて」
の瞳が揺らぐ。
ダメだ、止まれない。
唇が、触れ―――
「ダメに決まってんだろ、バカかお前は!」
「グッ…!!」
触れる前に、膝が鳩尾にクリーンヒットする。
カタギにもどってしばらく喧嘩なんてしてなかったのでそこそこ効いた。
そのまま倒れ込むようにの上に覆い被さる。
「重てぇ…お前な、冗談でもやりすぎだ!オレがモテないから茶化してんだろ、これだから慣れてるやつはムカつくわ。しかも何が悲しくてファーストキスを友達に奪われなきゃならねえんだよ」
「…………………」
「…………千冬?」
覆いかぶさったまま、の体を抱きしめた。茶化してるはずない、慣れてるから簡単にしようとしたわけない。抱きしめても、手にキスをしても受け入れてくれたから、だから期待してしまっていた。もしかしたら、と。有り得るわけないのに。なんで男同士だとダメなんだ?どうして。
「ごめん、やりすぎた。痛かったよな。大丈夫か?」
「………………はぁ、平気だよ。別に」