第14章 優しき一日を
「もしかして、ピアノすごい子じゃない?有名だよね、くん」
「え、あ、えっと…そう、かな……一応、ピアノはやって、ます………」
「お前態度変わりすぎだろ」
「かわいいだろ?オレの」
そう言ってどこか誇らしげに、の肩を抱き寄せる千冬。
「君が大事そうにしてたお守りって、もしかして千冬からもらったのか?」
「おい馬鹿余計なこと言うな」
「へ?お守り?あの必勝祈願のやつ?」
「そうそう、ぶつかったら︎︎さ、大切なお守りが汚れたらどうしてくれるんだってキレられたから…」
「………」
「あーもう!なんで言うんだよ!クソ…」
顔に手を当ててハァ、とため息をつく。
その隣には口元を抑えてプルプル震え悶えてる千冬。
なんだコイツら。
「タケミチくん、二人ともお似合いだね」
「え?ああ、うん?」
「もう、鈍いなぁ。タケミチくんも、くんも」
二人に聞こえない程度の小声で話しかけてきたヒナの言っている意味はよく分からなかったが、ふふっと微笑えむ姿はいつも通り可愛い。
「じゃ、オレ達そろそろ行くわ」
「またな千冬!ピアノのちっこいのも」
「おう、地獄に落ちろ。それじゃあ、ヒナさん、さ、さようなら」
「あはは。またね、二人とも」
二人と別れの挨拶を交わし、少し進んだところでふと振り返る。
「お前なぁ、オレがいない時に無闇に喧嘩売るなって言ってるだろ?」
「うるせー。喧嘩売ってねぇし。てかお前がいる時はいいのかよ」
「おう。オレは姫を守るナイトだからな」
「誰が姫だ!殴るぞ!」
千冬のあんな顔は見た事がない。
眩しそうに愛おしそうにをみつめる表情は、まるで
「タケミチくん、ぼーっとしてどうしたの?」
「いや、なんでもない!」
オレがヒナを見る時と、同じだと思った。