第13章 仲直り
お前は辛かったんだよな、ずっと。
「!何言ってんだよお前…!」
黙っていた千冬が、声を上げる。
「冗談でいってるんじゃない。俺は本気だ。俺が辞めれば、お前のお母さんはお前を見てくれるんだな?なら、俺は喜んでやめる」
「ハ………本気で馬鹿なのか、君は」
「ああ、馬鹿だよ。馬鹿でもなんでもいい、いいんだ、
だって、お前。そんなの悲しすぎるだろ。
なんでそんな寂しい気持ちでお前が過ごさなきゃいけないんだよ。
何年間、耐えてきた?辛かったよな、寂しくてたまらなかったよな。
大丈夫、お前は何も悪くないよ」
情けない。
泣かないと決めていたのに、目から零れる涙が止まらない。
俺はずっと、こいつが可哀想で仕方がなかった。
子供は親から無条件に愛されるものだと俺は信じて疑わなかった。
でも、そうじゃないやつがここにいる。
「…なんで、が泣くんだよ」
「っ、んなもん、わかんねーよ俺だって、だけど、俺の言葉で喜んでくれたお前の顔が忘れられねえんだよ、クソッ…」
『嬉しいんだ。僕、今までそんなふうに言われたこと、ないから。』
俺のお母さんは。俺がピアノが上手くなくても今と同じくらい愛してくれただろう。
もし俺が高木の立場だったら。
もし、お母さんのあの瞳が、俺を超えて高木をみていたら。
血のにじむような努力をしても、誰からも認められなかったとしたら。
耐えられない。
きっと、生きることに失望してしまう。
もし今このまま放っておいたら、高木は壊れる。
いや、壊れていたんだ。きっと、とうの昔に。
壊れて、ボロボロになった破片をなんとかくっつけて耐えていたんだ。