第13章 仲直り
特別指導室にて、高木と話せる事になったのはあれから3日後だった。
先生に生徒同士で話したいと言うと「危険だ」と反対された。
そこで千冬に同席してもらうと伝えたところ「ああ、それなら大丈夫か」とあっさり了承。
「よかったな、千冬。不良嫌いの先生がお前に信頼を置くなんて、明日は槍でも降るかもな。傘のかわりに中華鍋でも持って歩くか?」
「ああ、それいいな。ついでにその中華鍋でお前のケツ一発ぶん殴ってやる」
「やってみろよ、俺は負けねえぞ」
「どこから湧き出てくるんだよその謎の自信は」
軽口を叩きながら向かえばあっという間に生徒指導室の前に辿り着く。
高木は先にいると言っていた。今、この扉の向こうにいる。
「っ……」
扉にかけた手が震える。
一つ、深呼吸をする。
「…………よし」
扉を開けると、そこには随分やつれた様子の高木がいた。
力なくパイプ椅子に座り、こちらを見ることなく、ただ机を無気力に見つめている。
俺は高木の前に着席した。
千冬は俺の隣には座らず、扉の傍で腕を組んで壁にもたれ掛かるように立っている。
何かあった時のためにすぐ動けるようにか、それとも俺らが話しやすいよう気を使ってくれているのか。きっと両方だ。そういうやつだ。
「高木」
「……………」
「お前、飯食ってんのか?夜はちゃんと眠れてるか?」
「……………なんの用かと思えば、同情しに来たの?」
「違う、心配なんだよ。俺ら友達だろ」
「………友達?」
「俺はそう思ってる。お前が声をかけてくれた時、俺嬉しかったんだ。俺達は、今からでも友達に戻れるだろう?」
「ふざけるなよ」
鋭い刃のような声は、怒りを孕んでいる。
「僕はお前が憎い。殺したい。お前のせいで、僕の人生は終わった」
「何言ってんだよ、終わってないよ。
まだ中学生だぞ、これからじゃねえか」
「ッ黙れ!お前がいなかったらお母さんは僕を観てくれた!お前さえいなければ…!!お前のせいだ!!!」
高木の中にあるのは、劣等感だけじゃない。
世界でたった一人の、母親からの愛を奪われた事への憎悪だ。
それなら、
「それなら、俺はピアノをやめる」