第2章 君の瞳は
松野千冬。
うちの学校じゃ知らない奴はいない、超有名人中の有名人。
喧嘩が強い上にイケメンでオシャレという、俺からしたら目障り極まりない存在だ。
所謂陰キャの俺とは真逆の存在なのだ。
俺はうるさいやつが嫌いだ。頭が痛くなる。
特に不良はうるさすぎるし素行も悪くて最悪だ。
松野千冬は、苦手だ。
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「お前、目悪ぃの?」
「悪くないのに眼鏡なんかする奴いねーだろうが」
清掃担当が決まった2日目。
相変わらずこいつは愛想の「あ」の字もない態度だ。
「お前いつからピアノやってんの?」
「3歳だけど。さして興味ねえクセに一々どうでもいい質問してくんな不良野郎」
「………かわいくねーやつ」
「俺にかわいさを求めんな」
昨日オレはこいつに一目惚れをした。
ただし、眼鏡をかけていればいつもの根暗のにしか見えない。
もしかしたら、昨日見たあれは見間違いなのかもしれない。そうなら、その方がいい。
だってオレがあのに恋するなんてどう考えたっておかしい。馬鹿げてる。
オレは今しがたホウキを掃除ロッカーにしまったの前に立った。
「な、なんだよ…やんのかコノヤロウ…」
「そんな身構えなくても、お前みたいな明らかに弱いのと喧嘩なんかしねぇって。
いいからちょっと顔見せて」
「はぁ!?ちょ、おい…ッ!」
の眼鏡に手をかけ、ゆっくりと外す。
「………」
「おい、松野……見えねえって………」
「………やっぱり、絶景だった……」
「とうとう頭イカれちまったのか?いいから返せ!」
ああ、オレの頭はイカれちまったかもしれない。
「……お前、今まで顔についてなんか言われたことある?」
「いや、ねえけど。何?俺の顔がブスだっていいてーの?」
「は?お前自分のことブスだと思ってんの?」
「別に。まあどこぞのモテモテな不良さんに比べたら良くはねぇだろうけど」
「誰の事言ってんの?それ」
「嫌味かよ、殺すぞ。お前がくっっそイケメンだって1年の時から女子が騒いでて不愉快だったんだよ。はぁ、世の中ほんと不公平だよな」
その言葉はそのままお前に当てはまるだろ、とつっこまずにはいられないが、心の中に留めておく。