第1章 出会い
「カツアゲから守ってやった時もそんな態度だったよなテメェ」
「痛いっ…」
「親に言いたきゃ勝手に言えよ、そんなのにビビって不良なんかやってねえ。一発殴らせろ」
そう言って。殴ってやろうと腕を挙げると同時に、押し付けた衝撃で既にズレかけていた眼鏡が、が顔をバッと背けた勢いで床に落ちた。
の眼鏡はレンズがでかい上に厚いため、その顔をほとんどちゃんと見た事がなかった。
「…………………」
これから殴られるという恐怖からか、それとも衝撃に備えてか、ギュッと瞑られた瞳には信じられない程に長く美しいまつ毛がフサフサと生えている。
その状態でも十分にわかるほどに、美しい。
「……?」
中々殴られない事に疑問を抱きながら開かれた目は、大粒のアーモンドのような形をしていた。
澄み渡る空を映しこんだようなブルーの瞳は、嘘みたいに美しい。
「………おい、松野」
「え?あ、ああ…」
「…殴んねえのかよ」
「……………はぁ。そんなにビビられたら殴れねえよ」
「っ!び、ビビってなんかねえよ!」
「ハイハイ、もういいって。掃除しようぜ」
「…?なんだよ、急に…」
不思議そうな顔をしながら眼鏡と箒を広い、床を履くに背を向けた。
「…………ッ」
赤くなった顔を、片手で覆う。
なぁ、嘘だろ、オレ。
アイツに一目惚れしたのかよ。