第13章 仲直り
「…!!」
帰宅するなり、お母さんが俺を抱きしめた。
お母さんに抱きしめられたのはいつぶりだろう、小学生以来か。俺から恥ずかしいからやめてくれと頼んだ記憶がある。でも、この温もりが今は懐かしい。
「よかった、よかった…!怪我はない?先生から電話が来て話は聞いたわ!私、心配で…!」
「ママ、泣かないで、大丈夫だよ。
ごめんね心配かけて。千冬が助けてくれたんだ」
「松野くん…!本当にありがとう、なんてお礼を言えばいいのか…」
リビングで事の詳細を話した。千冬には公園で既に話した内容だ。
友達になれたと思ったやつは俺を殺したいほどに憎んでいた。そいつもピアノが好きだった。
だから、
「……だから、高木と話がしたいと思ってる」
「…………松野くんが一緒なら、わかったわ。
ごめんなさい、この子をよろしく頼むわね」
「はい、オレが絶対に守ります」
「……俺も一応男なんだけど」
同じ男の筈なのに、お姫様みたいに護られるのはなんだか悔しくて複雑だ。思わずムッとしてしまう。
そんな俺の気持ちを感じ取ったのか、おかしそうに千冬が笑った。
「ああ、そうだな。も男だもんな」
そう言って、ぽんぽんと頭を優しく叩かれる。今度は子供扱いかよ、と口から漏れた。