第13章 仲直り
「刺されそうになった時、"千冬"って心の中で呼んだら、お前が、本当に来たんだ。
千冬、すげぇかっこよかった」
照れくささを隠しきれいまま伝えた。
あの時のお前は、この世の誰よりもかっこよかった。そして嬉しかった。
そう伝えると、俺を抱きしめたまま無言で動かなくなった。
「……千冬?」
返事がない。どこか体調でも悪いのかと思い一度離れようとするが、ビクともしない。力強すぎだ。
「お、おい……大丈夫か…?」
「大丈夫じゃない。今のが可愛すぎて色々無理。顔みないで」
「は、はぁ?何言ってんだお前…」
同性である千冬にかわいいと言われてもイマイチピンとこない、なんなら微塵も嬉しくないが、今日はとりあえずいいかと心の中にしまった。
「………なぁ。高木、大丈夫かな」
「はぁ?お前なぁ………」
ゆっくりと体を離し、呆れたような声を出した千冬が俺の顔を正面から真っ直ぐ見る。
「あのさぁ……オレはお前が心配だよ。どこまでお人好しなの?」
「………そんなんじゃねえよ。
確かにあんな事するのは正直やべえと思う。だけど、だけど………」
「ピアノでお前に勝てないから嫉妬であんなことしたんだろ?心配してやる事ねえって」
『お母さんはいつも君の話ばっかりするんだ』
『僕を見て、僕を』
『もう、疲れたんだ』
あいつの言葉が、頭から離れない。
「俺……高木と話がしたい」
「はぁ!?何言って…!」
「あいつは、寂しかった…んだと思う。ずっと。今だって。あんな事する程に追い詰められてたんだ」
「ダメだ、危険すぎる」
「なら、一緒に来てよ。千冬は俺を守ってくれるんだろ?」
「〜〜〜ッ!あーもう、わかったよ!
お前ちょっとタケミっちに似てるとこあるよな…」
「?タケミっちって誰……?」