第12章 俺のヒーロー
「ッ!やめろ!!なんでだ、なんでこんな事!!!」
「もう、疲れたんだ。君のせいだからね、君のせいだ。僕は悪くない、悪くない!!」
ナイフを突き立て、俺に向かって来る。
恐怖で足がもつれ、その場で転んでしまう。
立とうとするが、立てない、足に力が入らない。
怖い、怖い、誰か、助けてくれ、
千冬―――
ドンッ!!!という激しい破壊音が鳴り響き、高木の動きが止まる。
「何してんだ、テメェ」
都合のいい幻覚でも見ているのだろうか。
壊れた音楽室の扉から現れたのは、ずっと仲直りしたいと願っていた、俺の初めての友達。
「千冬ッ…!」
「…………!!邪魔しやがって!!来るなぁぁぁぁあ!!!!」
「ッぁ…!」
高木に腕を引かれ無理やり立たされた後、後ろから羽交い締めされ首元にナイフを突きつけられる。
引きつった悲鳴が口から漏れて、恐怖で全身の震えが止まらない。
「く、来るな!!来たらを殺す!!!」
「…バカかテメェ」
「千冬ぅッ…!」
「、大丈夫。お前はオレが絶対に守るから」
ニコッと俺の大好きな笑顔でそう語りかけると、
なんの躊躇いもなく真っ直ぐこちらに向かってきて、目にも止まらぬ速さで高木の手からナイフを叩き落とし顔面に拳をめり込ませた。
骨が折れるような鈍い音がしたと思ったらすぐさま俺の腕を引き寄せ、守るように優しく抱きしめた。本当に一瞬の出来事だった。
すげえ。噂では聞いていたが、こんなに強いなんて。
「大丈夫か、」
「ぁ……ち、千冬、おれ……」
恐怖でうまく喋れない。高木は気絶して倒れている。
「大丈夫、もう大丈夫だから。オレがいる」
俺のヒーローは、なんてかっこいいんだろう。