第11章 だって好きだから
「……あの、僕、高木です」
「ああ、知ってる。何の用?」
「じ、じつは…………僕も、ピアノ習ってて」
「え?そうなのか?」
ピアノ、というワードに反応したのだろう。
普段聞いた事のないような、どこか嬉しそうな声が聞こえてきた。
「う、うん。9年くらいやってて、その、ずっとくんと喋ってみたくて……」
「そうか、それで話しかけてくれたのか。嬉しいよ。ありがとう」
なるほど、今までオレが傍にいたから話しかけられなかったのか。それなら尚更、早急に仲直りをする必要があるようだ。
「あの…どうしたら、くんみたいになれるかな…」
「え、俺みたいに?うーん、そうだな…。
あ、そうだ。昼暇なら一緒に音楽室いこうぜ。
俺にお前のピアノ聴かせてくれよ。聴きたい」
「え!?あ、いや、その!僕のは、そんな…君みたいには、弾けないから…」
「何言ってんだよ、そんなの関係ねえって。お前の演奏だから聴きたいんだ」
「……っ、いいの?僕なんかが…」
「僕なんかなんて言うな。
なあ、よかったら俺と友達になろうぜ」
なんだよそれ。
オレはお前にそんな風に言われたことなかったのに。
「い、いいの!?うわあ、すごい、ありがとう…!実はうちの母親もくんのファンなんだ…!」
「はは、ファンって、大袈裟だ。でも嬉しい、マジで嬉しいよ。ほら、そろそろ授業始まるぜ。また昼休みな」
「う、うん!」
取られる。オレのが。
っていうかなんだよ。オレと喧嘩したらもう新しい友達作んのかよ?ふざけんな。
ああ、ムカつく。ムカついて仕方がない。