第11章 だって好きだから
「千冬〜に振られたのか!オレがストレッチ付き合ってやるよ!」
「……ああ、悪い」
ストレッチをしながら横目でアイツを見る。
周りが二人組でやってる中、一人で体を解している姿は今まで何度も見たことがある。これまでは気にも止めていなかった。あいつを知らなかったからだ。
「………おーい、の事見すぎだ」
「え?いや、そんなには見てねーだろ」
「いや、初めて動物園でライオンを見た子供並みに見てたぞ」
「…………」
「でもさ、お前ほんとと仲良くなったよな。ピアノがすげぇのはわかるけど、中身は至って地味だし眼鏡でかすぎて顔もよくわかんねーし、あいつのどこがそんなに気に入ったんだよ」
「……………全部」
「はぁ?」
それから、翌日。
「まだと喧嘩してんの?」
「…まあな」
まるで数ヶ月前に戻ったみたいだ。
オレは自分と同じような連中とつるんで、は一人本を読んでいる。
どこか寂しそうな姿に、そばにいてやりたいと思ってしまう。
「そんな穴が空くほど見てんなら仲直りすりゃいいのに…」
「うるせえ!」
「ヒッ!悪かったって、んなキレんなよ!」
「と絡んでから丸くなったと思ったけど、やっぱこえー…」
「千冬にガチでキレれるやつなんてくらいだろ、そう思うとやっぱアイツすげーわ」
友達の会話を聞き流しながらを見ていると、一人の男子生徒がのもとへ。
声をかけられたは本から目を離し、顔を上げる。
「あれ、高木がに話しかけてる」
「高木って誰?」
「バカ、同じクラスにいるだろ。スッゲー地味でいつもキョドってるやつ」
「……」
「っておい、千冬!」
高木?そんなやつオレも知らねえ。
知らねえけど、オレのに近づくなんざ100万年早え。
二人に気付かれないよう、後ろから会話が聞こえる位置まで近づく。