第11章 だって好きだから
今日から清掃場所が変わった。
オレは男子トイレ、はロッカールーム。
また清掃が退屈な時間に戻る。
との距離が近づいた、あの限られた時間の尊さを、オレは一生忘れないと思う。
「って進路とか決めてんの?」
「あー、俺はまだ…」
「ならさ、オレと同じとこ行こうぜ。別の中学の友達も一緒の高校受けるからさ」
「はは、それもいいかもな」
もし一緒の高校に進学出来たら。
きっとオレは、タケミっちにこいつのことを自慢しまくるんだ。
そして、もし、もしも付き合うことが出来たら。運動会は一緒に弁当食って、文化祭は二人きりでまわりたい。何をするにも、何処へいくにも、のそばにいたい。
「話してるところごめんなさい。くん、滝先生が職員室に来てって言ってた。多分、あの事で」
「……………ああ、わかった。ありがとう」
一人の女子生徒が声をかけてきた。恐らく別のクラスだろう。
名前も顔もよく知らないが、とは知り合いらしい。
驚いたのは、あのが普通に会話をする人間がいたという事だ。
「千冬、悪い。少し待ってて」
そういってあいつにしては珍しい駆け足で、職員室へと消えていった。
***
「なあ、さっきの休み時間なんで呼び出されてたんだ?」
昼休み。先程のことが気になったのでストレートに聞いてみた。
こいつの事だ、素行不良等で叱られた訳ではないだろう。
「あー……いや、大したことじゃねえから」
「…ふうん」
はぐらかされて、少し機嫌が悪くなる。
実際大したことじゃないのかもしれないが、それでも隠し事をされている気分だ。
もそれを感じ取ったようで、若干気まずい空気が流れた。
「あ………えっと、この前遊びに来てくれてありがとう。お母さんすげえ喜んでた」
「おう。今度はオレん家泊まりに来いよ」
「ああ、行きたい」
人間誰しも隠し事の一つや二つはあるだろうし、本人が大したことじゃないというから、そうなんだろう。ただ、どこの誰かも知らない女子はオレの知らないことを知っている。その事実にイラついてしまうのだ。