第10章 はじめてのお泊まり編③
「なに?」
「………好き」
「ああ、知ってるさ。お前は俺が好きなんだろ」
「……は?」
「俺か?俺も"千冬"のことが好きだ」
「………っ、バカ……」
俺も半分ノリで名前で呼び返し、好きだと言い返してやった。嘘ではない。今じゃ大事な友達だ。
しかし、ガバッと顔を上げて俺を見つめてくるその顔は予想に反して切ない顔をしていた。
目が暗闇に慣れて、窓から差し込む月の光でその端正な顔が歪んでいるのがよく見える。
なんでだ、なんでそんな顔をする?
「お前、大丈夫か?」
「…んなわけねえだろ、好きな人にそんなふうに言われたら…誰だってこうなる………はぁ……あー、ごめん。一回離れて落ち着くわ」
そういってベッドから出て、ソファに座った。
「……松野?」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」
「…………ついに壊れちまったか…」
付き合ってらんねぇ、と背を背けて寝ようとする。少しして、再びベッドの中に潜り込んできた。
「もう寝んの?」
後ろからギュッと抱きしめられる。
「あったけえ。サイズ感もちょうどいいわ」
「俺はお前の抱き枕か?」
「なってくれる?」
「いいぜ、大事にしろよ」
「当たり前だろ。なぁ、こっちむいて」
振り返って、再び向かい合わせになる。