第10章 はじめてのお泊まり編③
「なんか全然眠くねえ…」
「はは、わかる。なあ、ありがとな」
「…なんだよ急に」
「………お前さ、同学年にいた一個ダブってた人わかる?」
松野は今、なにか大切なことをオレに話そうとしてくれている気がする。
「……ああ、場地さんだっけ。知ってるよ。亡くなったよな、去年」
「…………そう。
ずっと、尊敬してたんだ。
誰よりもカッコよくてさ。あの人について行くって決めてた。
なのにオレ、ずっとそばにいたのに、守れなかった」
オレらの学年は全員体育館に集められ、場地さんが亡くなったことを伝えられた。その場で全員で黙祷を捧げたのをよく覚えている。
俺自身場地さんと関わった事はなかったが、そうか、あの人も不良だったのか。
「学校いるとさ、どこいっても場地さんとの事思い出してしんどかった。ずっとこんな気持ちのまま卒業すんのかな、そんなの嫌だなって思ってたけど、お前に出会えてやっと前を向けるようになった。今、毎日楽しくて仕方ねえ」
「……………」
「ありがとな、」
「……別に。
ま、それなら、俺がそばにいれば天国の場地さんも安心できるんじゃねーの?お前が元気ないと、心配しちゃうだろ、きっと。」
「…!…お前、ホントそういうとこ…」
「え?」
俺なにかまずいこと言ったか?と尋ねようとして、言葉が出なかった。
「ま、つの………?」
「ごめん、ちょっとこのままでいさせて」
松野のこんな弱った声、初めて聞いた。
覆い被さるように上から抱きしめて来るものだから圧迫感で少し苦しい。
けど、いい。
今はこのままでいい。
そっと、背中に手を回して優しく撫でる。
「…………」
急に名前で呼ばれ、すこし気恥ずかしくなる。