第9章 はじめてのお泊まり編②
「どんな種類の"好き"であっても、あなたがあの子の事をわかってくれたって事に変わりないわ?だから私、すごく嬉しいの。
それにほら、松野くんイケメンだから!あなたなら大歓迎よ!」
「な!何言って…!」
「うふふ、冗談冗談!
ありがとう、松野くん。
これからもあの子のそばにいてあげてね」
「………はい、勿論です」
話の区切りがついたところで、タイミングよく扉が開いた。
風呂上がりのは髪がしっとり濡れていて、顔の良さが際立っていた。部屋着もラフでめちゃくちゃ可愛い。これが最近流行りの萌えってやつか。よくわかった。
「二人とも何盛り上がってるんだ?」
「ふふ、内緒の話しよ?」
「はぁ?まあいいけど。松野、風呂入れよ」
「ああ、そうする。お風呂借りますね」
「ええ、ゆっくり温まっていらっしゃい」
この家は浴室も大層豪華だった。湯に浸かりながらテレビが観れるなんて、快適すぎて何時間でもいれそうだ。おまけに家庭用サウナまでついてやがる。
もしと一緒にここに入ったら…そんな妄想をしながらゆっくり入浴を満喫した。
部屋に戻ると、が髪を乾かしていた。
「おう、おかえり。長かったからのぼせて死んだかと思ったぜ」
「なめんなよ、お前みたいにヤワじゃねえっつーの。貸せよ、乾かしてやるから」
「いやいい……っておい!」
「いいから、やらせろって」
半ば無理やりドライヤーを取り上げ、後ろから髪を乾かす。
細くて癖のない綺麗な髪だ。この色素の薄い髪は地毛だと以前言っていた。本当に天使みたいだ。
『小学生の頃、雨の中びしょ濡れで泣きながら帰ってきた。』
この小さな体が、もっと小さかった頃。
遊びたい盛りだっただろうに、彼は幼いながら普通に生きていれば経験できたであろう限られた時間の楽しみを諦めた。
「……………」
どれだけ苦しかっただろう、どれだけ寂しかっただろう。
もっと早く出会えていたら、その孤独から救い出せただろうか。
「…松野?終わったのか?」
ドライヤーの電源を切り、そっと置く。
「…………松野?」
気づいたら、背後から抱きしめていた。
風呂上がりの香りがする。髪はまだ少し湿っている。