第8章 はじめてのお泊まり編①
入るや否やバタンと乱暴に扉を締め、ハァハァと荒くなった息を整えている。
「ハァ……もう最悪だ………荷物適当に置けよ……おいお前なにニヤニヤしてんだ」
「いやー?はお母さんにオレの事なんて話してるのかなぁと思って?イケメンだっけっか?」
「テメーーー!!」
顔を真っ赤にしたに、ふわふわの絨毯の上に押し倒される。
「あだだだだ!!!嬉しいけど頬ちぎれる!!!」
「ハァ!?いつも俺のことおちょくりやがって!!今日こそ仕返ししてやる!!!」
「いだァッ!?お前十字固めなんていつ覚えたんだよ!!」
「いつか絶対かましてやろうと思ってYahooで検索したんだよバーーーカ!!ざまあみろ!!」
ご丁寧に検索エンジンまで教えながら十字固めをカマされる。普通に痛てぇ。痛いけど、正直全然解くことはできる力だ。だけどそれはしない。こういう時間もオレにとっては至福……というとドのつくマゾのようで語弊があるが。が楽しそうならなんだっていいのだ。
無我夢中な俺たちは、扉が開いたことに気づかなかった。
「あらあら、あらまぁ!ふふふ、本当に仲良しなのね。お菓子持ってきたわよ?」
「ま、ママッ!?」
「あ、すんません、バタバタしちゃって。ありがとうございます」
「いいのよ?ふふ……。
、いいお友達ができてよかったわね」
「え、あ、その……い、いいから!はやく戻ってくれよ!」
「はいはい。また後でね、松野くん」
のお母さんが部屋を後にし、再び二人きりになる。
とりあえず食おうぜ、と机に丁寧に置かれたクッキーと紅茶を食べて落ち着くことにする。
お茶の味とかオレには分からねえけど、高級そうな香りがした。手作りのクッキーはバターの良い香りとほどよい甘みですげえうまい。