第6章 形の違う「好き」
「…………その、ありがとう。普通に嬉しい、けど…」
「信じられねーって顔してんな。
オレはさ、掃除が一緒になって、ちゃんと話してみてお前が根はいいやつだってわかった。
それからメールするようになって、お前と話すのが楽しいって思った。
お前の演奏を間近で聴いて、すげえカッケェって思った。
なあ、これだけ言ってもまだ信じられねーの?」
の瞳を真っ直ぐみつめる。
ぼやけてちゃんと見えていないはずなのに、照れくさそうに目を逸らした。
「……………ほ、褒めすぎだろ。
ば、罰ゲームなんじゃ、ねえの…?」
「は?」
突拍子もない話だ。
思わず間抜けな声が出た。
その後、若干の怒りがふつふつと沸いて出てきた。
「だ、だから、その…罰ゲームで、オレと仲良くしてた、とか………」
「お前、そんな風に思ってたのかよ。ふざけんな、流石にキレんぞ」
「っ!」
息を飲んでバッとオレを見あげる瞳は、怯えを孕んでいた。
何してんだオレは。怯えさせるために連れ出したんじゃねえだろ。
「わ、悪い!ごめんな怖がらせて。よしよし」
「こ、怖がってなんかねえ!!クソ、女みたいに扱いやがって、よしよしすんじゃねえ!」
頭を撫でていた手をパシッと振り払われた。
猫みたいだ。そう、例えるなら拾ってきたばかりの野良猫。
「ははっ、悪い悪い。
大事にしたいんだよ、お前の事は。
それに、くだらねえ罰ゲームに乗る程人間腐ってねえよ。
信じてもらえてなかったのがちょっとムカついただけ」
「………松野………ごめん……………」
「ん、ちゃんと謝れて偉いな」
「…………今度はガキ扱いかよ」
「だって反応が一々可愛いから。仕方ねえよ」
ぽんぽんと頭を撫でれば、恥ずかしげにそっぽを向く。全ての反応が初々しい。
これから先、そんな反応を見るのはオレだけでいい。
「松野」
「ん?」
「オレ、お前に話したいことがある。
………話、聞いてくれるか?」
今は、オレを必要としている。
胸がキュッと締め付けられたみたいに苦しい。紛らわせるように、の手を握った。
「聞きたい。聞かせてくれ」