第6章 形の違う「好き」
―――シィン、と一瞬にして静寂が広がる。
「っぁ……」
我に返ったようにハッとしたが、口元を抑え俯く。
「…………ッチ、なんだよこいつ」
「あー、ごめん、やっぱオレコイツ無理だわ〜。千冬と仲良くなったからって調子乗ってる」
「私もシラケたー」
「解散解散」
ただ怒りに呑まれただけの怒号ではない。
オレには、それが切なる悲鳴にしか聞こえなかった。
しかし、他の奴らがそれを感じ取ることはない。
クソったれ。なんて自分勝手なやつらなんだ。
そう思って、連中を怒鳴ってやりたい気持ちになる。
それでも、そんな事をするよりも今は二人きりの場所で寄り添ってやりたいという思いが勝った。
「、大丈夫か」
「……るせぇ…………」
声色から察するに相当参っているようだ。
さっきまでの周りに群がってたクラスメイトに声をかける。
「おい、オレちょっとこいつと5限サボるから先生に適当に言い訳しとけ」
「は?ちょ、千冬!適当にって何て言えば」
「っるせえ!テメェらで考えやがれ!!」
「ヒィッ!!ご、ごめん!わ、わかった!!」
「…行こう、」
「え、ちょっ………………」
困惑するの腕を取り、教室を出る。
苛立ちからか、クラスメイトにはあんなに乱暴な声が出たというのに、にかけた声は自分でも驚く程に柔らかいものだった。
立ち入り禁止の屋上に足を踏み入れる事をは嫌がったが、半ば無理やり連れてきた。
「、大丈夫か?」
「……何が」
「悪い、オレがもっと強く言えばよかった」
「なんでお前が謝るんだよ」
「……まぁ、そうだよな」
隣に腰掛けるを横目でみる。
レンズの隙間から垣間見える目はやはり美しい。
「ずっと気になってたんだけど。なんでそんなに周りに壁作るんだよ」
「お前に関係ないだろ」
「関係なくねえよ、友達だろ」
そういうと、何かに気付かされたように振り向いてオレを見た。
分厚いレンズの奥の瞳がよく見えない。今どんな表情をしている?
もどかしい。