第5章 もしもし、君へ
――好きだよ。
オレに向けられたものではないのに、何をときめいているんだ。ダセェ。
恋は人を愚かにするってドラマで誰かが言っていた。その時はピンと来なかったけど、ああ、なるほどな。こういう事なんだ。
『……みんなこんな風に、毎日誰かとメールや電話して繋がったりするんだな』
「あー、まあ、そうだな。そういう奴多いと思うぜ」
『思ったより友達同士って、その、距離感が近いんだな。今日お前がハグしてきたのも驚いた』
「あ、ああ…そうだよな、ごめん」
『なんで謝るんだよ。友達はああするんだろ?』
「おう………あ、え?ん??」
なにかもの凄い勘違いをさせている気がする。
『もし、この先お前以外にも友達が出来たら、その時は俺からハグす「ダメだ!!!!」
『わ!びっくりした、急にデケェ声出すな!』
「いいか、もし友達できてもハグすんな。絶対に。約束な」
『は、はぁ…?なんでだよ意味わかんねぇ。お前は俺にしたじゃん』
「あれは、その、アレだ!時と場所を考えないでしたら嫌がられるからな。お前にはまだ早え!」
『はぁ?わけわかんねー』
「てかお前さ、オレに抱きしめられて、どうだった?嫌だった?」
何聞いてんだ。
『いや、別に嫌ではねーけど、ビックリした。初めてだったから。
あ、でも。お前あったかくて優しい香りがした』
「は、ハァ!!!!???」
『うるせえ!!デカい声出すな!!』
「お前が変な事言うからだろ!あークソ!………うわ、最悪………」
『松野?』
視線を下げれば、膨らんだ下半身が視界に入った。
最低だ、オレ。
「……もうそろそろ寝るか」
『ん、そうだな。また明日な、松野』
「おう、おやすみ」
通話を終えた携帯を布団にほっぽり投げ、ガバッと勢いよくベッドに倒れ込む。
「…………あー、とセックスしてぇ……」
心底最低だ。