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【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第4章 独壇場



ハッとして、松野の顔を見る。
ああ、あの眩しい、優しい目だ。


「これからはオレが色んなとこ連れてったりしてさ、今まで経験出来なかった分沢山楽しませてやるからな」
「…………松野………」


信じたいと思った。
松野の事を、やっぱり信じていきたいと強く思った。


「松野」
「ん?」
「友達になった証だ。
食べながらでいい、俺のピアノを聴いてくれ」

「…!」

「そうだな、お前に贈るなら………この曲がいいな」


椅子に座り、蓋を開ける。
鍵盤に手を乗せ、スっと息を吸い込んだ。












演奏を終え、一息つく。
ここ最近で一番丁寧に弾いた気がする。

椅子から立ち上がり、いつも舞台でするお辞儀、ボウ・アンド・スクレープをする。

「―――ご清聴ありがとうございました」
「す………………っ、すげぇ…!なんだよ、お前の指どうなってんだよ!本当にすげぇ奴なんだな…!」
「う、うるせえ!…褒めすぎだ、バカッ…」

褒めちぎられて照れくさいというのに、椅子から立ち上がり駆け寄ってきた松野に頭を撫でられるものだから、くすぐったくて仕方がない。

「今弾いたの、なんて曲?」
「フランツ・リストのマゼッパ。ずっと練習してた、大切な曲。
これを誰かに聴かせたのは、お前が初めてだ」
「ッ………」
「友達になってくれてありがとう、松野。俺、嬉しい。本当だ……うわ!」

腕をぐいっと引かれたと思ったら、体が包まれるような感触。ふわっと香るのは、優しい香り。ああ、松野ってこんな香りがするんだ。

俺、松野に抱きしめられてる。

「ま、松野?」
「……オレも、超嬉しい。なぁ」
「なに?」
「これからずっと、ここで2人きりで飯食いたい。だめ?」
「え、あ、別に、いいけど…」
「よっしゃ!約束な。
それから、移動教室も、体育のストレッチも、オレと一緒な?」
「………お前は、いいのかよ。
お前みたいなカッコイイやつが、俺なんかと…」
「バカ、俺なんかとか言うな。オレはお前がいいんだから」

ぐしゃ、と髪を撫でられる。



「お前はもう、一人じゃねえよ」



胸の奥から込み上げてけるこの感情は、何だろう。



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