第26章 秋
…………………
「おいコラ男。お前ら俺に伴奏させといてそんな歌い方とかふざけてんのか?弾くのやめるか?おい」
「「「すみませんでした」」」
「次の全体練習で進歩してなかったら男全員腹筋100回やれ。高木、パート練の時引っ張ってやって」
「え、あ、うん…!」
「女子はすごくいいと思うよ、ちゃんと練習してるからどんどん良くなってる。伸びがあってハーモニーも綺麗だ」
「くんッ…!」
「私達一生ついてく!!」
やっぱりこいつは音楽に対して本当に真摯だ。
いや、もはやスパルタだ。鬼だ。
放課後、中学最後の合唱コンクールに向けてオレたちは練習をしていた。
音楽室を借りての練習中、つい、去年の事を思い出してしまった。歌に集中せず考え事をしていたとにバレたらしばかれるに違いない。
「よし、今日はとりあえずここまでにしましょうか!」
指揮者兼クラス委員長の声を合図に、練習が終わる。
なかなかのスパルタぶりにあちこちから肩の力が抜ける声が聞こえたが、それはどこか充実感や達成感のようなものが含まれていた。
「そういやさー、去年楽譜なしで弾いてたよな。みんな舐めてんのかってキレてたぜ」
どうやら他の連中も考えていた事は同じらしい。まあ、真実まで知ってる人間は自分以外にはいないのだが。