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【東リべBLD】君の鼓動を旋律に【松野千冬】

第26章 秋





「そーそー、俺も思ったもん」
「お前ら変な事よく覚えてんな。あれは……」

机の中から唐突に消え、かと思えばコンクール終了後に現れた楽譜。盗まれたと、いくら鈍いこいつでも気がついていたはずだ。
それでも、

「忘れたんだよ、家に」

こいつは、わざわざ言わない。

そういう気高い人間だから、オレはお前に惹かれたんだ。

「アホだなー!」
「お前今年は忘れんなよ!!」
「万が一忘れても平気だ。任せろ」
「うお、急にかっけえな」
「だって取りたいだろ、最優秀賞」
「おま……日本一持ってるからいらねえべ??」
「いるよ。皆で取りたいんだ」
「「「ッッ〜!!!」」」
「うわうるさ……もはや慣れてきたわ」

ふいに、体育館までとぼとぼと寂しそうに歩いていた去年のの映像が脳に浮かんだ。
ああ、もっと早く彼に接触すればよかった。クソったれ。

「千冬、音楽室の鍵は委員長が持ってってくれるみたいだから。帰ろうぜ」
「……」
「千冬?……うわっ!おい!!」

キャー!と女子達のピンク色の悲鳴が聞こえたがどうでもいい。
鼻腔をの甘い香りが通り抜ける。なんていい匂いなんだ。あとこの腕に収まる小さい体もサイズ感がジャストすぎる。

なあ、今年のコンクールは、一緒に体育館へ行こうな。
オレたちの自慢の伴奏者様を、後ろで寂しく歩かせたりはしない。

「何してんだよバカ、離せ!」
「無理」
「またやってるわあの二人」
「お前らそろそろ付き合っちまえよ」
「はぁ!?つ、つき、つつつつつきあうって」
「いや動揺しすぎだろ、冗談だっつーの!」
「冗談じゃねーし、オレと絶対付き合う」
「ばっ、おまッ……!!!!」
「あーあ、千冬もおかしくなってら。まあこの二人なら付き合っててもおかしくないわな」
「仲良すぎるもんなあ、最近微笑ましいを超えて尊敬に変わってきたわ。千冬の愛が深すぎて」
「ッあ〜〜!クソっ、いいから離、せ!」
「あだっ!?」

足を思い切り踏まれ、渋々解放する。




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