第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
ギルは先にテラス席に座り、私は飲み物を買ってきた。キウイとレモンの果汁が入った緑色のドリンクだ。少し湿った空気が鼻を通り抜ける。
「飲み物だけ買ってきました。お腹が空いたらいつでも言ってくださいね。」
「ありがとう。」
ギルはちゅーちゅーとジュースを飲み始めた。顔だけは笑顔だ。
「酔い止めが早めに効いてよかったです。」
「本当に。あなたを可哀想な目に合わせるところだった。」
「ギルが酔う前にこれでもかってくらい楽しんでたので大丈夫でしたよ。」
「でもねえ……」
またギルはジュースを吸った。ジュースの中で星形の黄色いお菓子が泳いでいる。
辺りが一層暗くなったかと思うと、静かな音楽が流れてきた。
『見て! 流れ星だ!』
夜空を青い光が照らし、外国語の歌が流れてきた。青色の星を乗せたボートが水の上を走っている。赤い花火が何度も打ち上がった。
『いつか外の世界を見てみたいわ!』
出てきたキャラクターたちが次々に願いごとを言う。この少女の輝いた目はとても見覚えがある。本を買い求めるお客さんの目だ。きっと私も同じ目をしているのだろう。
場面は切り替わり、青い魔人が現れた。重たい音楽に乗ってラップを歌っている。一万年も眠っていたようだ。
今度は白い花火が打ち上がる。最初に願いごとを言っていた少女が外に出る不安と楽しさを歌う。
「わかります。知らない世界って不安もわくわくも両方あるんですよね。」
「本だけじゃわからない情報が詰まってるよね。」
賑やかな音楽から一変し、静かなハミングが聞こえてきてきた。恋する女の子が意中の王子様に会いに行きたいと願っている。しかしそれを悪役のおばちゃんが利用して、魔法で女の子の美しい声を奪おうとしていた。