第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
「あれ……」
眠気が晴れると、元居た世界のギルの部屋だった。本の香りがする。部屋には微塵も埃が積もっていない。ギルは変わらず私を抱きしめたままだ。
「俺たち戻ってきたのかな。」
「外に出てみますか?」
一緒に立ち上がり、手を繋いで部屋のドアを開けた。しかしゴン!とドアが何かにぶつかった。
「は?」
「あ、ローデリヒさん。」
「ローデリヒ、第一声が『は?』は子兎さんに失礼だよ?」
「ふ、二人とも、一年もどこに言ってたんですかっ! 先生! 先生―!」
ドタドタと、ローデリヒさんは体をふらつかせながらヴァルターさんを呼びに行った。
「げ、戻って早々ヴァルターの診察かな。」
「またあの苦いお薬飲まされそうですね。」
渋い顔をしたギルの顔を見ていると、笑いが込み上げてきた。
「きっとオーナーもギルと私を見たらひっくり返りますね。」
「忠犬くんなんか泣いて喜びそうだ。」
「ふふ、慰めにお土産話をたくさん用意しておきます!」
「俺は二人きりがいいなあ。」
オブシディアンの冷涼な空気を胸いっぱいに吸い込んで吐き出した。今着ているのはあの夢の世界で買った服だ。この服はクローゼットの奥にしまっておこう。
――一週間後。「驚くほど健康体だ!」と言って気絶したヴァルターさんは、私たちの話を基に新しい健康食を開発したのだった。