第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
「ギルが許しそうにない悪役ですね。」
「汚くて悪寒がしてきたな。現実の人間じゃなくてよかった。」
一緒に顔をしかめていると、水の上を走っていた星の煌めきが鈍っていった。
『霞んでいるのは希望を無くしているからだよ。願いが叶うわけないって諦めちゃってるんだ。』
ドン!という音とともに、炎が水の上を包み込んだ。
「え! どうやってるんでしょう!?」
「解説してほしい?」
「家に帰ったらお願いします!」
何度も打ちあがった赤い花火の音が心臓を打つ。外の世界に出た少女は好きな人と結ばれ、声を奪われた女の子は無事に声を取り戻して王子様とも結婚した。
『諦めなければ願いは叶うのね!』
沢山の白い花火が眩い。声を奪われていた少女は、助けてくれた父に感謝している。
『愛してるわパパ。』
花火によって残った煙を見ていると、煙が滲んできた。ギルの大きな手が私の頭を素早く抱き寄せる。
「ふぐっ」
「やっぱりあなたの泣き顔は他の人には見せられないよ。」
ギルの穏やかな心音が聞こえる。ギルの胸で涙を拭いてもう一度、顔を湖に向けた。パレードに使われた船が奥に戻って行っている。その光景を見つめていると、視界が白くなり、だんだん眠くなってきた。