第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
幸い短いアトラクションで、すぐに降りられた。ギルに肩を貸して多目的トイレに駆け込む。
「おええ」
限界だったようだ。ギルの背中をさすりながら酔い止めと水を取り出した。ここにヴァルターさんがいてよく効くお薬を出してくれたら……と思わずにはいられない。
「おえ……」
「安静にしてれば落ち着くので大丈夫ですよギル。」
ギルは酔い止めを苦しそうに飲み込んだ。吐き出さないといいが。
息を切らして壁にもたれかかったギルを支える。
「かっこ悪すぎる……」
「恥なんて捨てるんです。」
「無理……」
うっぷ、とまた心臓に悪い声が聞こえた。
「げほっ、ごほっ…… 男なら誰だってかっこいい部分だけ見せたいと思うものでしょう?」
男の人の意地か。こういう部分も仕方がないのだ。
背中をさすり続け、やっと表情が柔らかくなってきた。今日はもう乗り物には乗らない方がいいだろう。片手でスマホを操作する。
「せっかくあなたとデートしてるのに。」
「ネズミーランドにはアトラクション以外にも楽しめる要素があったはずです。」
「今は物も食べられないよ?」
「あ、ほらパレードがそろそろ始まるみたいです!」
ギルもスマホを覗き込んだ。夜の水上パレードと書かれているそれは、あと三十分後だ。ギルは少し顔色が戻ってきている。ほっと息をついて酔い止めとスマホをしまう。
私たちはパレードの近くにあったカフェで陣取った。