第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
山肌が丸見えなデザインのジェットコースターは、貨物列車のような乗り物だった。
「これくらいなら怖くないです!」
「最初に乗ったのと比べたらかなり遅いね。落差もあまりないみたいだ。」
一緒にわー!と叫んで、ギルとつないだ手ごと上げた。新鮮な空気を乗せた風が心地いい。
「次は宇宙のジェットコースターか。あれも今のやつくらいだと一緒に楽しむ余裕があるんだけど、どうだろう。」
「出てきた人がしおしおですね…… でも乗りましょう!」
「やっぱりあなたは度胸があるな。」
夕焼けが空を支配する頃、アトラクションから出た私は干からびていた。ギルはなぜこうも笑顔を輝かせられるのだろう。
「可哀想に。すっかり生気を失って。」
「まだまだ……あとウンディージョーンズに乗ります……」
「だめ。……いや、せめて少し休もう。あの船は穏やかそうだよ?」
「そうですね。ところで、今日は私がやりたいことをやらせてくれるんですね。」
「あなたが喜ぶかと思ってチケットを用意したのに、制限ばかりじゃ可哀想でしょう? ミッミーにハグしようとしたときは本当にどうしようかと思ったけどさ。」
「あれは不可抗力というか。」
「ん? まだ何か言ってるの?」
「なんでもないです。」
船はムキムキの船頭さんが軽やかにオールを漕いで進んだ。異国情緒あふれる石造りの建物に茜色の空が合わさっている。その光景に息を吐きだした。
「綺麗ですね…… なんだか、ベニトアイトを思い出します。」
「確かに、色違いみたいだ。俺たちの世界が恋しい?」
「……ギルは怒るかもしれませんが、人が恋しいです。会えなくても、あの世界にはギル以外皆いますから。」
「ふうん。」
日が沈み、隣にいるギルの表情が見えなくなってきた。
「嘆いても私が今いるのはこの世界なので。さあ、次のジェットコースターです!」
「元気だねえ。」
そんなお年寄りみたいな……という言葉は飲み込んだ。そう言えばギルはこの見た目でもう三十代だ。正直、シュヴァリエ様と同い年という事実が信じられない。
ギルの手を引いて船を降りた。