
第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)

「え! 今の見ました?ギル。ティーカップが動きましたよ。」
「見た。ティーポットとポールハンガーも動いてたよ。」
「そんなに見れたんですか? 流石ですね。」
「あの甲冑もずっと見てるんだけど、あっちは動いてないみたいだ。」
ティーポットとポールハンガーもまじまじと観察するが、なかなか動かない。ひょっとすると少し珍しいのか。
ギルが私の肩を抱いて前に進んだ。乗り物の大きなティーカップが見える。いよいよだ。
「ふふ、子兎さん楽しそうだ。」
「見てるだけでも楽しいです! この作り込まれた世界観がおとぎ話の夢を見てるみたいで!」
「俺も、昔聞かせられたおとぎ話の世界って感じがするな。」
ギルと一緒に白いティーカップに乗り込んだ。大きな木のドアが開き、食堂に招かれる。
『ようこそ、お客様! 食べ過ぎにはご用心~!』
燭台が歌い、花瓶や食器が踊り、久しぶりの客を歓迎している。そして才女と野獣が仲を深めるが……野獣が狩りに来た人たちに重傷を負わされてしまった。才女は悲しみ、「愛してるわ。」と泣いている。すると野獣の傷は魔法でたちまち治り、人の姿の王子様に光を纏って戻った。ダンスホールで踊っている才女と王子様をお城の従者が見守り……才女と王子様は結ばれたのだった。
「「ぐすっ……」」
「あ、ギルも泣いてたんですね。」
「あれ、おかしいな。物語で涙が出るなんて……」
「私とギルの馴れ初めとシンパシーを感じましたもんね。」
「確かに俺、最初は怖がられてたな。」
「すごく怖かったです。」
「今じゃこんなに大好きなのに。」
「ギルは仕方がない人でしたから。」
「仕方がないって?」
「それはもう……こんなに。」
「何の説明にもなってないなあ。」
出口から出た後も気持ちがふわふわしている。
「感動物に乗ったので次は絶叫系に乗りたくなってきました!」
「震えるほど怖がってたんじゃなかったの?」
「あのスリルが今たまらなくなってきたんです。これもギルとシンパシーがありますよ。」
「喜んでいいのかなあ……」
「近場の山のジェットコースターから行きましょう!」
「今度は最初から俺の手を握っててね?」
「もちろんです! ギルは何か乗りたいものありませんか?」
「全部乗りたい。だからあなたが乗りたいものから乗ろう。」
かくして絶叫系を乗り尽くすことに決めたのであった。
