第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
「ほら、怖いでしょう?」
「ううう、暗いしこの安全バーものものしいですし……」
「やっぱり手を握ってた方が安心するよ?」
「ま、まだ大丈夫です。」
「強がっちゃって。」
上半身をがっちりシートに固定する安全バーで既にドキドキする。安全バーのクッションは柔らかいような硬いような感触だ。チラチラとギルの膝に置かれた手を見ずにはいられない。ギルの早く握れと言わんばかりの視線が痛い。
乗り物は普通の速度で発進した。かと思いきや、突然ガッと止まった。
「え、嫌な予感しかしないですね……」
「そうだねえ。」
この軽い返しは絶対に楽しんでいる。なんなら乗ってからずっと口角が上がっている。
『3、2……1……!』
ド―――――ッ!
「うああああああ!!!」
「あはは!」
風を切って物凄い速さで急発進した。暗闇の中に様々な色の光の線が浮かび上がっている。
急カーブで外側に引っ張られ、落下で体が浮き、上昇でシートに張り付けられる。ギルの手を握りたくて仕方がない。しかし手が手すりをひしっと握っていて離れない。赤いヒーローが暗闇の中で何かしているが、じっくり見る余裕もない。