第16章 ギルと一緒に異世界満喫してきた!(ギルベルト)
ギルはもぐもぐとポテトを食べている。ミッミーとの写真は諦め、私たちはカフェに入った。が、未だギルは不機嫌なままだ。椅子を隣に寄せてポテトを全て私の手から食べてもらっているのに。これ以上どうすればいいのかわからない。
「そろそろ機嫌直してください。」
「無理なのわかってるよね?」
「未遂ですから。」
「これでも我慢してるんだ。あなたが本当にハグまでしてたら、このネズミーランドは地図上から消えてたよ。」
「相手はミッミーですよ?」
「中身はにんげ」
「あっ、あー! それ以上は言っちゃだめです!」
ギルは終始真顔で私をじっと見つめている。不機嫌でも差し出されたポテトは食べるのが可愛い……というのは火に油だ。
「でも、折角のテーマパークだ。譲歩に譲歩を重ねて、あなたがキスしてくれてる写真を撮るなら、大目に見てもいいかもね?」
ごくり。と生唾を呑んだ。きっと私はその写真を眺めるギルを見るたびに穴に入りたくなるのだろう。
「その写真を見るのは家でだけですよ?」
「どうしてあなたに決められなくちゃいけないんだろう。」
「私が死ぬからです。」
「それは大変だ。」
ギルはにこっと笑ってスマホを取り出した。
「はい、ちーず。」
目をぎゅっと瞑ってギルの柔らかな口に私の口を押し付けた。
「ふふ、いい出来。」
ギルは写真を眺めだした。あまりにも早過ぎる死刑宣告だ。
急いでマップを取り出し、近くのアトラクションを指さした。
「ギル、このアトラクション楽しそうですよ! ヒーローをテーマにしたジェットコースターみたいです。」
「ジェットコースターかあ。怖かったら俺の手を握っていいよ?」
「はは、大丈夫ですよきっと……」
頑張りたい。……できるだけ。