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イケメン王子1口サイズ小説集

第15章 愛した女の笑顔(シュヴァリエ)


夜の間も馬を走らせ、昼過ぎになった。雲は少ないがゴロゴロと雷の音が割と近くで鳴っている。
城はもう目前。速度を落として林の中を進む。ベルは昼を食べ終わって俺の帰りをそわそわと待っているだろう。

「チッ……」

馬を止めて地面に降りた。

「出てこい。」

木の陰から賊がぞろぞろと出てきた。たったの5人だけだ。少し遠くで控えているやつも含めると合計8人。舐められたものだ。

「こいつ国王の方じゃねえか。女が最近この辺歩いてるって情報があったんだよな?」
「間違いありません。」
「まあいいか。剣を抜けお前ら!」
「はあ……」

見るからに手ごたえのなさそうなゴロツキだ。剣の持ち方も構えも何ひとつなっていない。
ドッとバケツをひっくり返したような雨が降ってきた。

「今日はつい力が入ってしまうかもしれんな?」

つい最近整えられた林の土と草を踏み、間合いを詰めた。みぞおちを”少し”強めに殴る。賊は剣を振ることすらできずに地面に沈んだ。2人目、3人目……と全員殴って呼吸困難にさせていく。抵抗すらできていない。 陰湿に矢を飛ばしてきている敵には、矢を投げ返してやった。ついでに足元の立とうとしている男の足に余った弓矢を刺しておく。

「ぐっ、やっぱり化け物……」

城の方からべちゃべちゃと泥を踏みながらベルが駆けてきた。が、ベルは俺の足元を見て息を呑み、固まってしまった。残り二人の弓を持ったやつにもさっさと弓を投げ返し、ベルの方を向く。

「……少々出迎えが派手でな。だがもう片付いた。」
「あ、あの……お怪我はないですよね?」
「ああ。」
「よかったです。」

ベルの影から隠密のルシアンが進み出てきた。

「シュヴァリエ様、申し上げにくいのですが足元の子葉はつい最近ベル様が植えた種から出てきたものでして……」

足元を見る。双葉の子葉は自分の靴と賊の体で潰れていた。
とりあえず未だ悶絶している賊を蹴飛ばしてどけていく。……ベルから視線を感じた。

「仕方がないことですから、シュヴァリエ様。あまり気にしないでください。」
「そう言われてもな。」

子葉が生えていない道の方に出たが、ベルの口角は上がる気配がない。それも自分のせいで。

「まだ種は余ってるか?」
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