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イケメン王子1口サイズ小説集

第15章 愛した女の笑顔(シュヴァリエ)


ベルを手本にし、潰れた子葉を立たせて根元にシャベルで土を寄せた。まさか自分が土いじりをするとは。
ゲリラ豪雨は過ぎ去り、空は元の晴れ模様だ。
俺の手元をじっと見ていたベルは少しだけ口角を持ち上げて口を開いた。

「花って土から葉っぱが出て来るときが楽しみなんですよね。花を咲かせた時もいいですけど、こういう小さくて青々とした葉っぱが可愛くていいと思いませんか?」
「……物好きな。」
「そのうちシュヴァリエ様にも私の気持ちがわかりますよ。……多分。」
「植物を愛でられるのは一部の人間だけだろう。薔薇の国ではあるがな。」

そんなものですかねえ、とベルは呟く。口が若干への字だ。
それにしても、2人そろってしゃがみこんでシャベル片手に雑談など、クラヴィスが見ていたら茶化してきそうだ。愚弟は置いてきていてよかった。
一通り子葉のケアを終えると、ベルは麻袋を差し出した。

「これが種です。少ないですが、私も一緒に植えてもいいですか?」
「ああ。」
「土は被せるだけですよ?押し固めちゃだめです。」
「さっきもそう言っていたな。」
「あれ、そうでしたっけ。そういえば言った……いや言ってない気も……でもシュヴァリエ様の言う事ですし、言いましたね!」

愚鈍らしい。笑いが鼻から漏れる。ベルもそれを見てニコニコと笑っている。俺が笑うとつられて自分も笑うのがベルの見所の一つだ。俺が笑っていなくても勝手に笑うのだが。
雑草を引っこ抜き、種を蒔き、言われた通りに土を被せた。水はさっきの雨のお陰で必要なかった。

「これで完了です!デートというほどでもありませんが、一緒に植えた花ですから。ちょこちょこ見に来ましょうね、シュヴァリエ様!」
「そうだな。存外、悪くなさそうだ。」

ベルがシャベルを持っていない方の手で俺の手を握る。

「今日はお疲れだろうと思ってハーブティーを用意しました!ジェイド産で良質ですよ。」

ベルは城に向かって歩いている間もニコニコ、ニコニコと笑顔が絶えない。あの種は花屋のおすすめだそうだ。道端にふさわしく、控えめで小さい花を咲かせるんだと楽しそうに話している。俺は今まで花など気に留めたこともなかったが……

貴様といると、初めてのことばかりだな。
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