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イケメン王子1口サイズ小説集

第1章 ワンライまとめ


【楽しいお花見】


「お手をどうぞ?」

差し出された手と笑顔のギルベルト様を見て、笑みがこぼれた。ギルベルト様にエスコートされて馬車を降りる。雲一つない青空で、太陽が眩しい。私は片手で3段のお弁当箱の包みをしっかりもち、ギルベルト様に手を引かれてサクサクと音を立てながら野原を進んだ。
今日は待ちに待ったお花見。『ロードライトとの国境付近に桜が見られる場所があるんだ。』とギルベルト様から数か月前に誘われたのだ。お弁当のメニューを考えていたときは心躍った。
目の前の川沿いには桜の木が遠くまでずっと並んでいる。白い花びらに葉っぱの緑色が混ざって、とても温かい色合いだ。生暖かい風が吹き、ひらひらと白い花びらが舞い落ちた。

「すごく綺麗です!なんていう種類ですか?」
「Vorgelkirsche」
「フォ、フォゲ……?」
「セイヨウミザクラだよ。」

ギルベルト様と私はひと際大きな桜の木の下に腰を下ろした。ギルベルト様はよいしょ、と言ってあぐらをかく。後ろを付いて来ていたヴァルターとローデリヒさんが残りのお弁当箱の包みを傍に置いてくれた。ギルベルト様が一瞥すると、二人はそそくさと離れていった。

「ふふ、何箱あるの?」

よくぞ聞いてくれた。と胸を張る。

「15箱です。気合を入れて、中身は全部違うものにしました!」
「嬉しいなあ。あなたが俺のためにこんなに頑張ってくれて。」

ギルベルト様がパカっとお弁当箱の蓋を開けた。

「これは定番のおにぎりです!味はなんと塩、鮭、シソ、ツナの4種類!」
「こっちは?」
「こっちは鮎の塩焼き、あれはハンバーグ、バターコーン、ほうれん草の胡麻和え……」

ギルベルト様は機嫌良さそうに目を細めてニコニコと聞いている。

「最後のこれは――」

ギルベルト様が最後のお弁当箱の蓋もパカっと開けた。

「今回の自信作、卵焼きです!」

瞬間、上から何かがぽとっと落ちてきた。
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