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イケメン王子1口サイズ小説集

第14章 小さな猛獣使い 後日談(クラヴィス)


このままでは永遠にクラヴィスさんは食事に手を付けない。とにかく信用を得なければ、と私はクラヴィスさんのステーキの切れ端を食べた。

「ほら、何も変なものは入ってませんよ。」
「……本当だな?」
「本当です。」

クラヴィスさんは眉間に皺を寄せながらも、ステーキを口に運んだ。何も変な味がしないのに安心したのか、ぱくぱくと食べ進める。残り半分のステーキに手を出し、飲み込んだ時、クラヴィスさんはナイフとフォークを落として目を見開いた。

「っ……」
「おお!」

ステーキは半分だけ薬をかけたのだ。クラヴィスさんはみるみるうちに縮み、白い毛がもふもふと生えてきた。丸い耳も見える。クラヴィスさんの服がパサリと床に落ちた。
数秒経つと、白い体に黒のまだら模様が入った子ユキヒョウが椅子の上にちょこんと座っていた。尻尾は太く、体と同じくらいの長さがある。ずんぐりむっくりな体形だ。よく顔を見ると、つぶらな瞳をしていて口はへの字だ。白いひげがぴょんぴょんと生えている。

「か、可愛いー!!」

子ユキヒョウをバッと抱き上げ、膝に乗せた。ふわふわとした毛の感触をしばらく楽しんでいたが、シリルさんに作戦が成功したら小さいクラヴィスさんを見せてほしいと頼まれていたのを思い出した。小さいクラヴィスさんを抱えて部屋の外に出た。

「ちょっとお散歩しましょうか。」

昨日と打って変わって、廊下は差し込む日差しで暖かい。少し歩いたところで、ぷるぷる……と腕に震えが伝わってきた。

「クラヴィスさん?」

ぶるぶると震えが大きくなったかと思うと、クラヴィスさんは腕から飛び出し、廊下を全力で走り出した。

「クラヴィスさん!?ちょっと待ってください!!」

クラヴィスさんを追って私も全力で廊下を駆け抜ける。運動不足のせいですぐに息が上がった。

「子ユキヒョウ!お嬢さん成功したんですねって、どこにいくんですかクラヴィス様!」

シリルさんも加わり、ふたりで追いかけた。階段を降り、厨房を通りすぎ、エントランスを抜けて、クラヴィスさんは庭に飛び出した。

あっ!そ、その先は――!
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