第14章 小さな猛獣使い 後日談(クラヴィス)
ばちゃん!
子ユキヒョウ姿のクラヴィスさんは、庭の水たまりに思いっきり突っ込んだ。
ぽんっ!
一瞬にしてクラヴィスさんは人の姿に戻った。
そう、全裸の人間に。
「……」
「……」
「……」
気まずい時間が流れる。恐らく、各々言葉を探している時間だ。ところどころに残っている水たまりが反射して眩しいはずだが、クラヴィスさんの下半身に釘付けでそれどころではない。
はっと我に返り、辺りを見渡して、私たち以外に人がいないことを確認した。窓をよく見ても人は見えない。
「ベル。」
「はい!」
「服を取ってきてくれないか?」
「あっ、今すぐとってきます!」
「俺はここの茂みに隠れているからな。」
やっぱりやりすぎだったかもしれない。そう後悔してももう遅かった。
しかし、元はと言えばクラヴィスさんがあんな薬を開発するのが悪いのではないだろうか?
でも、やっぱり、と考えながら、ドタドタと音を立てそうな勢いで服を取りに走った。
ベルがせわしなく部屋に戻り、庭にはシリルとクラヴィスが残された。
「クラヴィス様、自分でまいた種ですからね。」
クラヴィスは眉間に皺を寄せた。
「……そんな厳しいことを言ってくれるな。今の俺は庭で裸なんだぞ?」
「それでも謝るのはクラヴィス様です。」
「俺が謝らなければまた薬を盛ると思うか?」
「ええ盛られます。絶対に盛られます。」
謝るか……とボソッと呟き、クラヴィスは空を仰ぎ見た。
その後、クラヴィスは本当に反省し、ベルに謝った。トラップの数は減らさなかったが、薬とその研究資料は廃棄したのであった。