第12章 You're my other half(シュヴァリエ)
一人慌てる私を尻目にノクトは優雅に紅茶を飲んでいる。からかうでも馬鹿にするでもなく、静かにソファに座っているノクトが何を考えているのか分からない。
「アンタの考えてることは分かるよ?」
「え?」
「真面目なアンタは後ろめたいんでしょ。こんなことしちゃいけないと思ってる。」
「不純なことじゃないの?」
「不純でも別にいいんじゃない?罪じゃないでしょ。」
ノクトが飲み干したティーカップを静かに置く。
「それに、一時的にでも満たされるなら人間は求めちゃうものだよ。男女関係なく、ね。」
ノクトを伺い見ると、いつもと変わらない笑みを浮かべていた。目を合わせていられず、視線を落とす。自分の手元のティーカップには、すっかり元気をなくしてしまった自分が映っていた。
「……ノクトの言う通り、一時的にでも満たされたくて、正直依存してた。でもその後が虚しくて、やめたいんだよ。」
「ふうん?」
「シュヴァリエ様に知られたら……あの人は私を責めも馬鹿にもしないだろうけど、こんな私を知られたくもないの。」
「俺は黙ってるよ?ついでにこの時間のことも。」
ノクトなら本当にそうしてくれるだろう。次の言葉が浮かばずにいると、先に口を開いたのはノクトだった。
「アンタは自分を責めすぎなんだよ。こうしなきゃいけないとか、自分で自分の首を締めてばっかり。少しくらい自由になったっていいでしょ。」
「そう……なのかな……」
「そうだよ。あ、俺は誰にも言わないって言ったけど、アンタも王サマには俺に相談したの言っちゃだめだよ?」
「相談だけならシュヴァリエ様は殺さないよ。」
「殺されないだろうけど、絶対嫌がらせの一つや二つされるでしょ。」
そう思ってるのに来てくれたんだ。
ノクトの気持ちに気づき、ふふっと笑ってしまう。目の前にいるのが相談がしやすいノクトでよかったと思う。
「でも依存したくないって言うなら、気晴らしにチェスでもする?」
「そうだね。一戦お願いしようかな。」
「アンタこの間はイヴちゃんとリオに負けたんだって?リオは忖度しなかったんだね。」
「そうなの。イヴより早かったよ。私が負けるの。」
コンコン
「あれ、またこんな時間に誰か――」
「ベル、俺だ」
「!?」