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イケメン王子1口サイズ小説集

第1章 ワンライまとめ


【forget-me-not キース視点】



ピーピピリリリリ

鳥の鳴き声で目が覚めた。隣で寝ている婚約者を起こさないようにそっとベッドから降り、バルコニーに出た。12月のキンキンに冷えた空気に体が震える。

「おはよう。昨日は公務が少なくて、ゆっくり寝られる時間を取れたよ。」

傍に置いていた冷たくなったジョウロを手に取り、白い横長のプランターに植えた花にいつものように水をやった。大きく成長した花の中に埋もれた、小さい花に目をやる。

「君は……今日も元気そうだね。よかった。」

小さい”この子”は他の花と同じように土から顔を出したが、植えてから2ヶ月が経っても子葉のまま成長していない。他の花は大きな本葉を6枚生やしているというのに。

「まあ、君はゆっくり育ってくれ。」

青々とした葉っぱについた水滴を拭い、ジョウロを持って部屋に戻った。

――風が吹き、雪が降り、雨が降ってもこの子は枯れることなく、元気に成長しないままだった。毎日水をやって話しかけていると春になり、他の花達は水色、白、ピンクの可愛らしい花を咲かせた。梅雨の時期には花を咲かせていた他の花達は萎れ、8月の今は完全に枯れてしまっていた。プランターには、ぽつんとこの子だけが葉っぱを生やしている。

「この子、もう真夏なのに全然枯れる様子がないですね。」
「長生きしてくれてるね。大きくならないから正直そのうち枯れてしまうと思ったんだけど。」
「キース様のお世話が上手なんですよきっと。」
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