第12章 You're my other half(シュヴァリエ)
土曜日と日曜日の今夜は、リオが子守歌を歌ってくれていた。シュヴァリエ様も赤ちゃんだったときは子守歌を歌ってもらっていたのだろうか。
「リオの子守歌、最初は聞き馴染みがない歌だなって思ってたけど、この三年で歌えるほどになっちゃった。」
「それだけ夜一緒にいたってことだね!……ここだけ聞いたらシュヴァリエサマが嫉妬しそう。」
「ふふ、そうだね。シュヴァリエ様は印象とは真逆で嫉妬深いところがあるかも。」
リオが来るようになり、何となく気恥ずかしく枕の下に隠した手紙にも焼きもちを焼いているような言葉があったのを思い出した。
「ねえ……リオ。寝かしつけてくれるのは嬉しいんだけど、もう流石にリオは寝ていいよ。」
「俺が眠れないベルを放っておけると思う?」
「でももう歌い始めて一時間だよ?流石に申し訳ないよ。」
「君のためなら2時間でも1日でも歌えるよ!」
「だめ。リオが死んじゃう。今日はもう帰って?明日は平日だし。」
しゅん……という効果音でも出そうな顔をしながらも私の意思を尊重し、リオは立ち上がった。
「おやすみリオ。私のことは気にせずに寝てね。」
リオには無理な話だと思いつつ、ついそう言ってしまった。
次の日の夜。昼にリオが贈ってくれた抱き枕を見て笑顔がこぼれた。
――「はいあげる!抱き枕って案外安心するからきっと寝やすくなると思うよ。虎型のを見つけちゃって、つい買っちゃったんだ。本当は犬にしたかったんだけどね。」
って言ってたっけ。リオのことだから虎を探してくれたのかな。それか特注だったりして……
耳を触ると、ここにもしっかり綿が詰まっていた。顔はデフォルメされていて可愛らしい。抱き枕にも香水を付け、その日は少しだけ眠るのが早かった。
――早かったのはその日だけだった。