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イケメン王子1口サイズ小説集

第6章 いつも通り(リオ)


 部屋に戻り、ベルと一緒にアップルパイを頬張る。手作りしたパイはフォークを指す度にサクサクと小気味よい音を出していて、日常となっている何気ないこの時間が好きだと改めて思う。
 チラリと、隣に座っているベルの横顔を見る。
いっそ出版社の代表という立場も、爵位も、なくなってしまえばずっと一緒にいられるのだろうか。
 そんな到底本人には言えない邪心を抱きながら、渡しそびれないうちに、とプレゼントを手に取った。

「ベル、はい。爵位を賜ったプレゼントだよ。キミは忙しい身だけど、隙あらば本を読むでしょ?キミにぴったりだと思って作ってもらったんだ。」
「わあ、しおり?リオありがとう。丁度買い換えようと思ってたところだったんだ。6本のオレンジの薔薇か……花言葉調べてみるよ」

 6本の薔薇の花言葉は……そうだった。''分かち合う''だ。ベルは素直に悩みや傷ついたことを言ってくれるようになったのに、自分がこうでは不公平ではないか。
 自分が用意したプレゼントだというのに、今更意味を思い出し、はっとした。

「リオ、ぼうっとしてどうかしたの?最近寂しい思いをさせてたのは分かってたけど……他にも悩みがあるの?」

 心配させてしまうなんて婚約者失格だな……
 そう思いながら想いをまとめるように外を見れば、いつの間にか、しとしとと小雨になっていた。

「ベル…… なんてことはない悩みなんだけどね?キミがどんどん知らない人になっていくようで、怖いんだ。キミは今や出版社の代表で、爵位も賜って、ベニトアイトで力を付けてる。それは俺も嬉しいし応援してるよ。キミはお飾りの婚約者じゃない。でも俺の知らない顔が増えていくから、不安なんだ。俺と一緒に過ごしてるキミは''いつも通り''でしょ?」

 ベルは咀嚼するようにアップルパイを見つめ、深呼吸して口を開いた。

「リオ…… 確かに、リオと過ごしてる時は''いつも通り''を心がけてたよ。リオにはただでさえ寂しい思いをさせてたから。それに結婚を国王に認めてもらいたくて、この国で力をつけることに躍起になってた。でもそっか。それが不安にさせてしまうなら、少し仕事を''分ける''?」
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