第6章 いつも通り(リオ)
1ヶ月後、俺はベルと薔薇がこれでもかと飾られたパーティー会場に足を踏み入れていた。今回は自分と懇意にしている貴族を多数招いたパーティーだ。開け放たれた窓から暖かい優しい風が吹いている。
隣にいる天使を見つめ、ベルのためにも出資の契約をたくさんもぎ取ってこなければ、と密かに拳を握った。
「リオ、今日はお願いね」
オレンジ色の背中が開いたドレスを着た女神のようなベルに、手をぎゅっと握られる。
気持ちを打ち明けてから、ベルの出版社に入社した俺は、ベルの右腕として働いていた。知らない顔があるのは嫌だ。というわがままな自分の願いを叶えてくれたのだ。
「期待してて!あの人達、お金に目がないし…… それとベル、パーティーの後、改めて伝えたい事があるんだ。待っててくれる?」
「……? もちろん」
今日に相応しい晴れた空は、窓から優しい月明かりを差し込ませていた。
――今日ベニトアイトの有力貴族と契約が取れれば、国王に結婚を認めてもらう約束をしていた。元より反対するつもりはない様子だったが、ベニトアイトの国王である以上メリットのある結婚でなければ認められなかったのだろう。国王にまだ報告すらしていないせっかちな自分に、クスリと小さく笑いをこぼす。
しおりの模様にもした6本のオレンジの薔薇の花束をそっと握りしめた。不安も悲しみも、喜びも、分かちあっていきたい。
「ベル、俺と、結婚してください」