• テキストサイズ

イケメン王子1口サイズ小説集

第4章 小さな猛獣使い(クラヴィス)


 日が高く昇り、所々に残った雪が煌めいている。嫌々人参を齧ってお腹を満たした私は、シリルさんに抱えられてクラヴィスさんの部屋に向かっていた。

「不思議な事もあるもんですね。いつも子兎、子兎って言われてましたけど、本当に子兎になっちゃうなんて、想像もしてませんでしたよ。」

普段はシュヴァリエ様をクラヴィスさんが起こしに行っている時間だが、今日はシリルさんがクラヴィスさんを起こしに行く予定だったらしい。

「お嬢さん、今日もあいつが無理しないように頼みます。」

 力強く頷く。シリルさんは表情を緩め、ドアを軽くノックした。毎日入っているのに、まるで初めて入ったような気分だ。そんな妙な緊張感を持ちながら、改めて部屋を見渡す。昨日よりも大量の書類と本で散らかっている。ソファに横たわったクラヴィスさんの体に潰されている書類は、公務のものだろうか。

「クラヴィス様、おはようございます。」
「ん……?ああ…おはよう、シリル。…その兎はどうした?」
「早朝、キッチンで人参を齧ってたそうです。その罪でシメようとしましたが、あまりの可愛さに見逃されたらしいですよ。公務のお供にどうですか?」

 クラヴィスさんはひとしきり笑った後、愉快愉快と言いながら頷く。今日も寝起きから元気な人だ。

「ベルは午前は街で読み書き教室の打ち合わせだったな。午後にベルが戻ってきたら、愛しのクラヴィスさんに会いに来いと伝えろ。愉快な事が待っているぞともな。」
/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp