第1章 夏の思い出
とてつもなく広い脱衣所。
四角いスペースにカゴが一つ、防犯なんてものは考えられて居ない。今では考えられない作りだ。
濡れた服をどうしたら良いのか置き場所に困っていると外から声が聞こえる
「服!水道とか床、カゴでも好きなところに置いて置いて!」
そんな事言うためにわざわざ戻ってきたのか
何というサービス精神なのだろうか
「ん、ありがとう」
言われた通り、服を脱いで軽くたたみ、床やカゴに入れることは流石によく無いと考え手洗い場に置く。
ヒーロースーツではないTシャツとズボンと下着だけ
誰に見られるわけでもないのに、下着は恥ずかしいので服と服の間に挟んで浴室へと扉を潜る。
「いや、風呂広すぎでしょ…」
目の前に広がる湯気と露天風呂。
シャワーで体を流せば海水独特なベタつきは取れてさっぱりとした感覚になる。
剛翼のペタリと張り付くような違和感が少しだけ和らいで…
手早く体を洗い温泉へと浸かる。
体から力が抜けてふぅと息が漏れる
ここ最近はとても忙しかった
増える敵犯罪、横行する英雄の愚行
そんな場所に派遣させられて汚い仕事の遂行する。
沢山の血と悲鳴と罵倒
手に染み付いた感覚と耳にこびりついた命乞いの声
後どれだけ経てば慣れるのだろうか
気を抜いて足を伸ばして風呂に入ることが久しぶり感じる。
広々としているのに癖で膝を抱えて座ってしまう。
「同い年か…」
同じ年齢の子とこんな話したのは、どれくらい前だろうか、記憶を辿れば辿るほどオレの人生でこんな経験は一度もない事に気がついてしまう。
普通の生活をする女の子と対等な位置で話をすること、そんなことは経験をした事がなかった。