第1章 夏の思い出
「ホークス!!貴様っ!!今すぐその娘の元へ行けッ!!No.1からの命令だっ!!」
ジーニストさんに支えられて項垂れて歩くオレにエンデヴァーさんが突然声を張り上げた。
その隣でジーニストさんが静かに声をかける。
「お前が望む世界になったのになぜ迎えに行かない」
「怖いじゃないですかッ、あの子が誰かと結婚してたらとか…」
「お前らしくねぇな!」
ミルコがバシリと背中を叩く。
あるきっかけにより、確かに敵犯罪は減った。
ヒーローが4人、千鳥足で街中を歩いていても誰も咎めることは無くなった。
なのに、オレは“あの夏”に囚われて今も胸を痛めている。
「話さなきゃ良かった」
「思い出話を酒の肴にしてしまって申し訳無かったなホークス」
ジーニストさんの言葉に首を横に振り止めたタクシーへと押し込まれる。
「大丈夫です…熱愛報道だって…みんな、なまえちゃんの面影追ってるんですよ格好悪いですよね」
「そうだろうな、ホークスのようなヤツがなぜ似たような女性とばかり報道が出るのか気になっていたのはそう言う理由だったんだな…今日は、飲み明かそう」
「だなっ!行き先はホークスの家な」
「まぁ、たまには付き合ってやる…男なら一途に」
「オッサンには言われたく無いよなぁ!ホークス」
3人が発する言葉が本当に有難かった。
ミルコの元気さや、ジーニストさんの気遣う言葉。エンデヴァーさんの不器用な優しさも全部が嬉しい。
「オレの家で飲みたいだけですよね?オレのこと本当に好きですね~」
それなのに、素直になれない言葉を吐き出してしまう。
揺れる車、騒がしい車内。
近づいてくる家。
視界が回る