第1章 夏の思い出
「ありがとう、ばあちゃん…お世話なったね」
そう言うとばあちゃんは笑って
「どうせ、もう来ないつもりだろ?」
鋭いその指摘に笑いばあちゃんに抱きついてごめんねとしか言えない自分が悔しかった。
なまえちゃんはオレとばあちゃんの姿を静かに見守ってくれた。
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港までの道は長いようで短い。
なまえちゃんと話しながら歩けばあっという間にあの桟橋だ。
「ホークス、この桟橋覚えてる?」
「流石に覚えてるよ」
なまえちゃんは2人の時はオレをヒーロー名で呼ぶようになった。
「あの日ね、本当は…綺麗な赤色が見えて何なのか気になったの」
「オレの羽の事?」
「そう。キラキラしてる海と青い空と入道雲…それはいつもと同じで、そこに見たこともない綺麗な赤色があって、無意識に走り出してたの…けど、あの日走り出して良かったってずっと思ってる」
なまえちゃんははにかんで笑う
もう少しだけ一緒にいたいと思ってしまう自分が憎い
「……砂浜あるかない?」
「時間、平気なの?」
「まだ1時間あるし、いざとなったら空飛んで飛び乗るから」
「ヒーローなのにルール守らないのは良くないよ?」
その答えに確かにと発してなまえちゃんの手を掴んで砂浜へと足を踏み入れる。