第1章 夏の思い出
「高鳥くん!!」
なまえちゃんがまた叫ぶ。
「本当の事を教えて…お願い」
両手で涙を拭いながら震えた声でオレを見つめてくる。
「今までの高鳥くんは…嘘じゃないよね…ばぁちゃんも大丈夫だよね?」
なまえちゃんは泣きながらそう言った。
その涙を手で拭ってあげ、いつもの営業で使うヒーロースマイルを見せる。
「オレの名前は、高鳥じゃない。ウィングヒーロー ホークス…この町には薬物摘発で派遣されたプロヒーローだよ…ばぁちゃんは怪我をして、意識無い事しかまだ分からない…」
「…ばぁちゃん生きてて良かった。……ごめん、混乱しててよく分からないや…高鳥くんは…ホークス…で、プロヒーロー?」
「そう…」
「本名が高鳥?」
「違うよ」
そう返せばなまえちゃんはまたボロボロと涙をこぼして言葉を続けた。
「なら、今年の夏ッ…私が一緒に過ごしたのは誰?」
「…オレは高鳥で君とばぁちゃんと一緒に過ごした…ただのひまな男だよ」
その言葉になまえちゃんは静かに頷きボロボロと涙をこぼし続けた。
着崩れた浴衣から見える肌を隠すように警察から渡された大判のタオルをなまえちゃんにかける。
「ばぁちゃんには言わないで?最後まで高鳥くんでいてよ…。けど、私の前では本当のあなたでいて欲しい、だって…この夏だけなんでしょ?」
自分で言い続けた言葉をなまえちゃんから言われて改めて感じる寂しさに胸が締め付けられる。
「ホークスさん!事件の話し聴取したいんですが」
「わかりました、今行きます…。その前に、この子を病院へ連れて行ってあげてください、怪我をした高齢女性と合わせてあげてください」
「分かりました…こちらにお願いします」
なまえちゃんは返事をせず警察官の後ろをついて行った。
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