第1章 夏の思い出
それなのに邪魔をする不審な人影。
あたりをキョロキョロと見回して雑木林へと入っていく。
「なまえちゃん、ごめん…オレちょっと落とし物しちゃったみたい」
「わ、私も探しに行くよ…」
「大丈夫、すぐ見つけてばぁちゃんの家行くから、なまえちゃんは先に帰ってて?」
「うん…早く帰ってね?」
そう言ってなまえちゃんは体にノイズを走らせる。
なまえちゃんの個性は1人であれば本当に便利だ。
潜入に向いてるしサイドキックにならないかな…と自分の手元に置いておける方法を考えてしまう。
なまえちゃんの姿が見えなくなったことを確認して人影を追いかける。
音を立てないように小走りで追いかけて、うずくまる人影を視認して声をかける。
「すみません、どうしたてんですか?」
「あ”!?1番会いたくねぇ奴じゃねぇか!!」
その声にため息が出る。
アルコールの匂いを纏い、顔を真っ赤にさせるなまえちゃんがお兄ちゃんと呼んだ男だった。
「何してるんですか?こんな所で」
「なまえはっ!?高鳥っ!なまえはどうした」
「家に帰って貰ったよ」
「はー!?お前はバカかっ!!男だったらなぁっ…ふぐっ…お前さえっ!来なければっ」
ボロボロと目から涙が溢れ出す。男が目の前で嗚咽しながら泣いている。出てくる言葉は“オレが居なければ”“お前さえこの町に来なきゃ”“なまえはオレの嫁になるはずだったのに”と恨みのこもったセリフを投げかけてくる。
酔っ払いは面倒くさい。
フラつく体を支えてあげて来た道を戻り始める
「いや、オレ居ても関係ないでしょ?泣き止んでくださいよ」
「小さい頃から可愛かったんだよっ」
「確かに、今も可愛いですからね」
「ずっと、お兄ちゃんって後ろついて来て…毎年、この祭りも一緒に来てたんだよ」
「なんか、すみません本当。でも、今年だけなんで」
「責任とれよっ!!なまえの事ッ幸せにしてやれよっ!!」
その言葉にヘラリと笑ってしまう。