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夏の思い出

第1章 夏の思い出



「なまえ、お前が友達と行きたいって言うから…」
「…だって、私…っ」

胸ぐらを掴む手に力が入り右手が振り下ろされる。なまえちゃんの悲鳴と目を瞑る動き。
パシリとその拳を掴んで力を入れて徐々に下へと下ろす。
一般人と毎日戦闘を繰り返すヒーロー力の差は歴然。

「すみません。オレ、ある程度の事なんでも出来るんで…態度が悪かったなら謝ります。オレこの夏で居なくなるんでこれ以上は辞めておきません?」
「お前っ!!…なまえの…」

「お兄ちゃん…やめてっ!高鳥くんごめんね。私、お兄ちゃんと本当は来る予定だったの。けど、高鳥くんと一緒に楽しみたくて、お兄ちゃんの誘い断って来たのッ」


その言葉に息を呑んだ。


嬉しい。


オレと来たかったと言ってくれたその言葉がすごく嬉しかった。


「ありがとう、ごめん」


なまえちゃんにそう言って微笑むしか出来なかった。
なまえちゃんは必死に首を横に振る。胸ぐらを掴む手に手を重ねて力を入れる。

「いっでぇ!!」
「離してください。言ったでしょ?オレ、この夏で居なくなるって、あなたがなまえちゃんの事大好きなのは分かったんで…もう、やめましょ?今はオレの時間です。構うのやめて貰えます?……断られたなら家で大人しく寝てろよ。女々しく会えるかもなんて思って声かけてチャンス狙ってるようじゃ本命は落とせるわけないだろ?それとも、オレとケンカして不様に負けるのをなまえちゃんに見せる?」

男の耳元で囁けば顔を真っ赤にさせて胸ぐらを掴む手を離す。
なまえちゃんは1人焦ったように2人の顔を見比べて困った顔をする

「お兄さん、もう帰るらしいよ?」
「そうなの?でも私…」
「なまえ…コイツのこと…何でもない。また、連絡するから」
「ごめんね、お兄ちゃん…高鳥くんは本当に悪くないから、私が言わなかったのが悪いから」

なまえちゃんは、オレは悪くないと必死に伝える。その行動が相手を惨めな気持ちにさせて居ることをこの子は気がついて無いんだろう。
“兄としか思ってない”と無意識伝えられた相手はどんな気持ちなのか



オレには理解できない気持ちだった。


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