第1章 夏の思い出
水に入れてなるべく抵抗を受けないように救いあげれば良いのだろうか、それを実践するのにただ手がびしょ濡れになる
「いまだーっ!!」
なまえちゃんが勢いよく上に引き上げたせいでオレに少しだけ水がかかる。なまえちゃんのポイは穴が空いてさらには袖まで濡らして子供だ。
「そで。濡れてるよ…」
「あ”!?ばぁちゃんに怒られる…」
「ばぁちゃん怒らないでしょ?」
「高鳥くんにだけだからね?優しいの」
そう言ってなまえちゃんはまた拗ねた時の癖を見せてくれる。
そんな話をしているとオレのポイに指を突き刺して穴を開ける
「はぁ!?それはズルか!!」
「ズルく無いよー、よそ見した高鳥くんが悪いんだよー!私、一匹掬ってるから勝ちね」
「卑怯な事して勝って嬉しいとかッ」
その言葉になまえちゃんは目を丸くする
「高鳥くん、方言使うの?」
その言葉にポイを店主に返しながらなまえちゃんの問いかけに返事をする。
「使ったら悪い?」
「悪くないっ!高鳥くん、てっきり東京とか都会の人って思ってたから…福岡なんだね…あれ、でも宿の帳簿は」
「今住んでるのが東京なだけだよ」
「そっか、そうだよね」
「それはそうと、なまえちゃん、金魚掬えてないね」
なまえちゃんはお椀へと視線を移して驚いた顔をする。
「嘘…高鳥くんのポイ破いた時に逃げたの!?引き分け…そんなぁ」
項垂れるなまえちゃんの姿をみて口元が思わず持ち上がってしまう。
本当は、ポイを破かれた時に剛翼を使って金魚を、水へと逃したのだけどその事になまえちゃんは気がついていないようだった。
「金魚いるかい?」
金魚を要るのかを店主に確認されるとなまえちゃんは首を横に振った。その行動を以外だと感じる、店を離れてなまえちゃんに問い掛ければポツリと答えた
「…金魚見るたびに高鳥くんの事思い出しちゃいそうだから」
そう言って恥ずかしそうに髪の毛を耳にかける姿が妙に色っぽく感じる。