第1章 夏の思い出
階段を登り神社の鳥居をくぐれば参道は屋台だらけで異様な活気とキラキラした眩い光、たくさんの人の笑い声と明るい顔。
「なまえちゃん、オレここに来てよかった」
守るべき物が何なのか目の前に広がる笑顔だ。悪意のないヒーローの必要が無い幸せの世界。
「そうでしょ?ちょ、ちょっと高鳥くん?」
「オレ、たこ焼き食べたい」
たこ焼きを受け取りなまえちゃんへと向いて爪楊枝で1つ刺してなまえちゃんの口元へと持っていく
「はい。あーん!」
「無理だよ!!絶対熱いに決まってる」
「そうなの?そんな事ないでしょー」
そう言ってパクりと自分の口の中に放り込む
あまりの熱さに目が涙目になりバタバタと地団駄を踏んでしまう。
「高鳥くん大丈夫!?」
なまえちゃんの声を聞きながらゴクリと飲み込み
「あっつー!!」
と声を上げる
「だから言ったのに」
「けど、これすごい美味しいね」
ケラケラと笑うとなまえちゃんがつられて笑う。こんなに心の底から笑ったのはいつぶりなんだろうか…なまえちゃんと2人で残りのたこ焼きを間食して、なまえちゃんに手を引かれて水槽が置いてある屋台に連れてこられる。
「金魚すくいしよ?」
そう言ってなまえちゃんは店主にお金を渡すと緑色のプラスチックに和紙が貼られた道具をオレに渡してくる。
隣にいる子供の動きを見ればこれを使って水槽を泳ぐ金魚をすくいあげるようだった。
「はい。ぽいどうぞ、…勝負ね?勝った方が負けた方のいうこと聞くね」
「オレ、大抵なこと出来るから、勝つけど良いの?」
「負けない秘策有るからね」
そう笑うなまえちゃんの笑顔につられて笑顔になってしまう。